12.5.2 正規表現
表 12.9 文字列正規表現演算子
名前 | 説明 |
NOT REGEXP | REGEXP の否定 |
REGEXP | 正規表現を使用したパターン一致 |
RLIKE | REGEXP のシノニムです |
正規表現は、複雑な検索でパターンを指定する強力な方法です。
MySQL では、POSIX 1003.2 に準拠することを目的とした Henry Spencer 氏による正規表現の実装が使用されます。MySQL では、SQL ステートメントで REGEXP 演算子とともに実行されるパターンマッチング演算をサポートするために、拡張バージョンが使用されています。
このセクションでは、MySQL の REGEXP 演算で使用できる特殊な文字や構造を例を示して要約しています。Henry Spencer 氏の regex(7) マニュアルページで検索できる詳細がすべて含まれているわけではありません。そのマニュアルページは、MySQL のソース配布の regex ディレクトリにある regex.7 ファイルに含まれています。セクション3.3.4.7「パターンマッチング」も参照してください。
正規表現演算子
expr NOT REGEXP pat, expr NOT RLIKE pat
これは、NOT (expr REGEXP pat) と同じです。
expr REGEXP pat、expr RLIKE pat
パターン pat と比較して、文字列式 expr のパターン一致を実行します。パターンは、拡張正規表現にすることができます。構文については、このセクションの後半で説明します。expr が pat と一致する場合は 1 を返し、それ以外の場合は 0 を返します。expr または pat のいずれかが NULL である場合は、結果も NULL になります。RLIKE は、mSQL との互換性を確保するために用意された REGEXP のシノニムです。
パターンはリテラル文字列である必要はありません。たとえば、文字列式やテーブルカラムとして指定できます。
注記 MySQL では文字列で C のエスケープ構文 (たとえば、改行文字を表すために 「\n」) が使用されているため、REGEXP 文字列で使用される 「\」 はすべて二重に指定する必要があります。 |
REGEXP では、バイナリ文字列で使用される場合を除いて、大文字と小文字が区別されません。
mysql> SELECT 'Monty!' REGEXP '.*'; -> 1 mysql> SELECT 'new*\n*line' REGEXP 'new\\*.\\*line'; -> 1 mysql> SELECT 'a' REGEXP 'A', 'a' REGEXP BINARY 'A'; -> 1 0 mysql> SELECT 'a' REGEXP '^[a-d]'; -> 1 |
REGEXP および RLIKE では、文字の型を決定する際および比較を実行する際に、引数の文字セットおよび照合順序が使用されます。引数にさまざまな文字セットまたは照合順序が含まれる場合は、セクション10.1.7.5「式の照合順序」で説明するとおりに、型変換属性ルールが適用されます。
警告 REGEXP および RLIKE 演算子はバイト単位で機能するため、マルチバイトセーフではなく、マルチバイト文字セットを使用すると想定外の結果が生成される可能性があります。さらに、これらの演算子ではそのバイト値に基づいて文字が比較されるため、アクセント記号付き文字は、指定された照合順序では等しいとみなされた場合でも、等しいとして比較されない可能性があります。 |
正規表現の構文
正規表現では、文字列のセットが記述されます。もっとも単純な正規表現は、特殊文字を使用していないものです。たとえば、正規表現 hello は hello にのみ一致します。
重要な正規表現では、複数の文字列に一致できるように特定の特殊構造が使用されます。たとえば、正規表現 hello|word は、文字列 hello または文字列 word に一致します。
さらに複雑な例として、正規表現 B[an]*s は、文字列 Bananas、Baaaaas、Bs のいずれか、および B で始まり、s で終わり、その間に任意の数字の a または n 文字が含まれるその他の文字列に一致します。
REGEXP 演算子の正規表現では、次の特殊文字および構造のいずれかが使用される場合があります。
^
文字列の先頭に一致します。
mysql> SELECT 'fo\nfo' REGEXP '^fo$'; -> 0 mysql> SELECT 'fofo' REGEXP '^fo'; -> 1 |
$
文字列の末尾に一致します。
mysql> SELECT 'fo\no' REGEXP '^fo\no$'; -> 1 mysql> SELECT 'fo\no' REGEXP '^fo$'; -> 0 |
.
任意の文字 (復帰改行および改行を含む) に一致します。
mysql> SELECT 'fofo' REGEXP '^f.*$'; -> 1 mysql> SELECT 'fo\r\nfo' REGEXP '^f.*$'; -> 1 |
a*
ゼロ個以上の a 文字のシーケンスに一致します。
mysql> SELECT 'Ban' REGEXP '^Ba*n'; -> 1 mysql> SELECT 'Baaan' REGEXP '^Ba*n'; -> 1 mysql> SELECT 'Bn' REGEXP '^Ba*n'; -> 1 |
a+
1 個以上の a 文字のシーケンスに一致します。
mysql> SELECT 'Ban' REGEXP '^Ba+n'; -> 1 mysql> SELECT 'Bn' REGEXP '^Ba+n'; -> 0 |
a?
ゼロまたは 1 個の a 文字に一致します。
mysql> SELECT 'Bn' REGEXP '^Ba?n'; -> 1 mysql> SELECT 'Ban' REGEXP '^Ba?n'; -> 1 mysql> SELECT 'Baan' REGEXP '^Ba?n'; -> 0 |
de|abc
シーケンス de または abc のいずれかに一致します。
mysql> SELECT 'pi' REGEXP 'pi|apa'; -> 1 mysql> SELECT 'axe' REGEXP 'pi|apa'; -> 0 mysql> SELECT 'apa' REGEXP 'pi|apa'; -> 1 mysql> SELECT 'apa' REGEXP '^(pi|apa)$'; -> 1 mysql> SELECT 'pi' REGEXP '^(pi|apa)$'; -> 1 mysql> SELECT 'pix' REGEXP '^(pi|apa)$'; -> 0 |
(abc)*
シーケンス abc のゼロ個以上のインスタンスに一致します。
mysql> SELECT 'pi' REGEXP '^(pi)*$'; -> 1 mysql> SELECT 'pip' REGEXP '^(pi)*$'; -> 0 mysql> SELECT 'pipi' REGEXP '^(pi)*$'; -> 1 |
{1}, {2,3}
{n} または {m,n} 注釈では、パターンの前の原子 (または「部分」) の数多くの出現に一致する正規表現を記述するより一般的な方法が提供されます。m および n は整数です。
a*
a{0,} と記述できます。
a+
a{1,} と記述できます。
a?
a{0,1} と記述できます。
より厳密に言えば、a{n} は、a の正確に n 個のインスタンスに一致します。a{n,} は、a の n 個以上のインスタンスに一致します。a{m,n} は、a の m 個から n 個までのインスタンスに一致します。
m および n は、0 から RE_DUP_MAX (デフォルトは 255) までの範囲内である必要があります。m および n の両方が指定されている場合は、m を n 以下にする必要があります。
mysql> SELECT 'abcde' REGEXP 'a[bcd]{2}e'; -> 0 mysql> SELECT 'abcde' REGEXP 'a[bcd]{3}e'; -> 1 mysql> SELECT 'abcde' REGEXP 'a[bcd]{1,10}e'; -> 1 |
[a-dX], [^a-dX]
a、b、c、d、または X である (^ が使用されている場合はそれ以外の) 任意の文字に一致します。2 つの文字の間の - 文字によって、1 番目の文字から 2 番目の文字までのすべての文字に一致する範囲が形成されます。たとえば、[0-9] は任意の 10 進数に一致します。リテラル文字 ] を含めるには、左括弧 [ の直後に記述する必要があります。リテラル文字 - を含めるには、先頭または末尾に記述する必要があります。[] ペアの内側に定義された特殊な意味を持たない文字は、それ自体としか一致しません。
mysql> SELECT 'aXbc' REGEXP '[a-dXYZ]'; -> 1 mysql> SELECT 'aXbc' REGEXP '^[a-dXYZ]$'; -> 0 mysql> SELECT 'aXbc' REGEXP '^[a-dXYZ]+$'; -> 1 mysql> SELECT 'aXbc' REGEXP '^[^a-dXYZ]+$'; -> 0 mysql> SELECT 'gheis' REGEXP '^[^a-dXYZ]+$'; -> 1 mysql> SELECT 'gheisa' REGEXP '^[^a-dXYZ]+$'; -> 0 |
[.characters.]
([ と ] を使用して記述された) 括弧式内で、その照合要素の文字シーケンスに一致します。characters は、単一の文字または newline などの文字名です。次の表には、許可されている文字名を一覧表示します。
次の表には、許可されている文字名および一致する文字を表示します。数値として指定された文字では、値が 8 進数で表記されます。
名前 | 文字 | 名前 | 文字 |
NUL | 0 | SOH | 001 |
STX | 002 | ETX | 003 |
EOT | 004 | ENQ | 005 |
ACK | 006 | BEL | 007 |
alert | 007 | BS | 010 |
backspace | '\b' | HT | 011 |
tab | '\t' | LF | 012 |
newline | '\n' | VT | 013 |
vertical-tab | '\v' | FF | 014 |
form-feed | '\f' | CR | 015 |
carriage-return | '\r' | SO | 016 |
SI | 017 | DLE | 020 |
DC1 | 021 | DC2 | 022 |
DC3 | 023 | DC4 | 024 |
NAK | 025 | SYN | 026 |
ETB | 027 | CAN | 030 |
EM | 031 | SUB | 032 |
ESC | 033 | IS4 | 034 |
FS | 034 | IS3 | 035 |
GS | 035 | IS2 | 036 |
RS | 036 | IS1 | 037 |
US | 037 | space | ' ' |
exclamation-mark | '!' | quotation-mark | '"' |
number-sign | '#' | dollar-sign | '$' |
percent-sign | '%' | ampersand | '&' |
apostrophe | '\'' | left-parenthesis | '(' |
right-parenthesis | ')' | asterisk | '*' |
plus-sign | '+' | comma | ',' |
hyphen | '-' | hyphen-minus | '-' |
period | '.' | full-stop | '.' |
slash | '/' | solidus | '/' |
zero | '0' | one | '1' |
two | '2' | three | '3' |
four | '4' | five | '5' |
six | '6' | seven | '7' |
eight | '8' | nine | '9' |
colon | ':' | semicolon | ';' |
less-than-sign | '<' | equals-sign | '=' |
greater-than-sign | '>' | question-mark | '?' |
commercial-at | '@' | left-square-bracket | '[' |
backslash | '\\' | reverse-solidus | '\\' |
right-square-bracket | ']' | circumflex | '^' |
circumflex-accent | '^' | underscore | '_' |
low-line | '_' | grave-accent | '`' |
left-brace | '{' | left-curly-bracket | '{' |
vertical-line | '|' | right-brace | '}' |
right-curly-bracket | '}' | tilde | '~' |
DEL | 177 |
mysql> SELECT '~' REGEXP '[[.~.]]'; -> 1 mysql> SELECT '~' REGEXP '[[.tilde.]]'; -> 1 |
[=character_class=]
([ と ] 使用して記述された) 括弧式内の [=character_class=] は、等価クラスを表します。これは、同じ照合順序値を持つすべての文字 (それ自体を含む) に一致します。たとえば、o および (+) が等価クラスのメンバーである場合、[[=o=]]、[[=(+)=]]、および [o(+)] はすべてシノニムです。等価クラスは、範囲の終点として使用できない場合もあります。
[:character_class:]
([ と ] を使用して記述された)括弧式内の [:character_class:] は、そのクラスに属するすべての文字と一致する文字クラスを表します。次の表には、標準のクラス名を一覧表示します。これらの名前は、ctype(3) のマニュアルページで定義されている文字クラスを表しています。特定のロケールでは、ほかのクラス名が提供される場合もあります。文字クラスは、範囲の終点として使用できない場合もあります。
文字クラス名 | 意味 |
alnum | 英数文字 |
alpha | アルファベット文字 |
blank | 空白文字 |
cntrl | 制御文字 |
digit | 数字文字 |
graph | 図形文字 |
lower | 小文字アルファベット文字 |
図形または空白文字 | |
punct | 句読点文字 |
space | 空白、タブ、改行、および復帰改行 |
upper | 大文字アルファベット文字 |
xdigit | 16 進数文字 |
文字クラス名 | 意味 |
mysql> SELECT 'justalnums' REGEXP '[[:alnum:]]+'; -> 1 mysql> SELECT '!!' REGEXP '[[:alnum:]]+'; -> 0 |
[[:<:]], [[:>:]]
これらのマーカーは、単語境界を表します。単語の先頭と末尾にそれぞれ一致します。単語とは、前後に単語文字が存在しない単語文字のシーケンスです。単語文字とは、alnum クラス内の英数文字またはアンダースコア (_) です。
mysql> SELECT 'a word a' REGEXP '[[:<:]]word[[:>:]]'; -> 1 mysql> SELECT 'a xword a' REGEXP '[[:<:]]word[[:>:]]'; -> 0 |
正規表現で特殊文字のリテラルインスタンスを使用するには、前に 2 つのバックスラッシュ (\) 文字を付けます。MySQL パーサーが 2 つのバックスラッシュの一方を解釈し、正規表現ライブラリがもう一方を解釈します。たとえば、特殊文字 + を含む文字列 1+2 に一致する正規表現は、次のうちで最後のものだけです。
mysql> SELECT '1+2' REGEXP '1+2'; -> 0 mysql> SELECT '1+2' REGEXP '1\+2'; -> 0 mysql> SELECT '1+2' REGEXP '1\\+2'; -> 1 |
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